2019年6月3日月曜日

そろそろ復帰できそうです

彼女は今日もあの店で働いているのだろうか。
彼女の明るい声や愛嬌のある動きを僕は鮮明に覚えている。仙台に戻ってからもずっと近くに(例えばソフトバンクショップとか)にいるような気がする。

出会いは高校の時だっただろうか…その日は酷く暑い日でどうしてもマックシェイクが飲みたかった。とはいえ当時の僕は、部活帰りに買い食いを我慢して小遣いを貯めていた。サルトル、ゲーテ、ニーチェ、アリストテレスらの本を買うためであったというのは嘘で、母の集め損ねた犬夜叉全巻を買うためにお金が必要だった(未だに9巻だけない)いずれにせよ、久しぶりの買い食いであった。

扉を開けると彼女が立っていた。
『目はパッチリとしていて黒目がとても大きく』、『陶器のような白さ』だった。「いらっしゃいませ!」という明瞭な声とともに深々とお辞儀をする彼女の快活な姿に、僕はすっかり虜になってしまった。帰り際彼女に話しかけようと思った。せめて『名前だけでも』と。けれども僕はそこで踏み止まってしまった。周りには小さい子が集まっていたし、たくさんの人が居た。そう、僕はビビってしまったのだ。そして、名前なんていつでも聞けるだろうと言い訳をして僕は店を後にしてしまった。

けれどその後、高校総体とか受験とかで中々あの店に行けずにいた。時の流れというのは残酷なもので、美しい記憶もいつのまにか薄れてしまう。いつしか僕は彼女のことを忘れてしまっていた。

そして時は進みこの間のGW。何気なく地元を散歩していた時、あの店の前を通った。ショーウィンドウ越しに目が合う。忘れていた、とっくに胸にしまっていた感情が舞い戻る。駆け足になるのを抑え僕は店に入った。彼女はあの日と『全く』同じ表情でこちらを見ている。今の僕はもう臆することはなかった、僕は高鳴る鼓動を抑え言った、
「君の名は?」


「僕、pepper!よろしくね」

迷走しました。全てフィクションです、すみません。
跳躍2年諸田