2019年6月16日日曜日

『そろそろ部活戻ります』

 『クリスティーナの世界』はアンドリュー・ワイエスが1948年に制作したアメリカを代表する近代画で、現在はモダンアートの聖地であるニューヨーク近代美術館に収蔵されています。よろしければお手元のスマホで検索してもらえると嬉しいです。
 この絵画を見ていただくと分かるのですが、全体の一番目立つ草原に、ある女性が横たわり腰を下ろしているのが分かります。実は、彼女こそがクリスティーナであり実際にこの世に生を受けており実在した女性です。
 ここまででは、『クリスティーナの世界』が凡庸な作品のように感じられますがこの作品にはその奥に物語に大きなワイエスの意図が隠されています。
 というのもクリスティーナはCMTという病気で下半身が麻痺していました。彼女の下半身は全く動きません。彼女は横たわっているのではなく、この姿勢しかできないのです。
 つまり絵の中のクリスティーナは横たわり寛いでいるのではなく、草原を必死に這って進んでいる様を描かれているのです。
 はじめこの絵を見たときと少し印象が変わりませんか?
 ただ、この絵はそのようなクリスティーナの悲壮を表した作品ではありません。実際のクリスティーナは下半身の麻痺にも絶望することなく自分ですべてを克服していこうと常に前向きに生きた方だったそうです。だからこそ誰かに車いすを押してもらうことなくこのように這って進んで生きていたのでしょう。
 そんな彼女の姿にワイエスは感銘を受けこの絵の制作を心に決めたようです。
 「大部分の人が絶望に陥るような境遇にあって、驚異的な克服を見せる彼女の姿を正しく伝えることが私の挑戦だった。」とは、ワイエスの言葉です。
 前置きが長くなりました。実は僕も病気になりました。気づけば入院し、まともに戻ったころには後遺症の治療について医師から説明されていました。こんなこと、一か月前には想像もしなかったことです。多分、怪我をしてつらい思いをされている方も怪我をする少し前に、自分がまさか怪我をするなんて思わなかったと思います。
 正直なところ、ずっと気持ちもふさぎ込んでいました。慣れない病室でぼうっとしていました。
 退院しても碌に動けず、死にかけの魚のようにずっと布団の上で過ごしていました。
 そんな中でも同期から電話をもらったりして気持ちも前向きになり、同時に病状も少しづつ改善していく中で、ずっと落ち込んでいては前に進めないと感じるようになっていきました。クリスティーナのように這ってでも前に進まなくては自分自身いい方向に行けない気がしています。
 「やってしまったものは仕方がない」くらいの気持ちで明るく前向きに怪我や病気を乗り越える心持ちが大事なのだろうと、この絵から感じます。歩くことに比べて這うほうが進む速度はゆっくりかもしれませんが、確実に前には進みます。
 余計なお世話かもしれませんが、怪我や病気で悩まれている方がこの絵を見て少しでも前向きになっていただけたら幸いです。
 自分の話になりますが、急に部活を長期にお休みし皆様にはご心配おかけしました。いろいろな方から心配の連絡いただきとても申し訳なかったと同時にうれしかったです。ありがとうございました。
 これからも這ってでも皆さんに追いつけるよう頑張りたいと思います。拙い文章ですがお読みいただきありがとうございました。

文責:投擲三年 嘉津山